Ontario Style Special Contents Vol.7 トラベル・ライターヨシザワのオンタリオ取材ウラ話 Vol.3

オンタリオに20年以上通い続けるトラベルライターのヨシザワです。
広大な原野をドライブし、ふと目にとまった風景や小さな店に立ち寄ってみる、そんな気ままな旅が気に入っています。行き当たりばったりに動いても、新鮮な出会いや驚きがあるのがオンタリオ州の魅力。
この特集ではそうした思いがけない発見や出会いを中心に、取材エピソードや各地にまつわるウラ話をご紹介します。

大自然からの贈り物!「100%天然のメープルシロップ」

雪解けの季節、幹からあふれ出す透明な樹液

カナダの特産品として、お土産にも人気の高いメープルシロップ。シュガーメープル(サトウカエデ)など、特定のカエデの樹液を濃縮して作られる100%天然の甘味料です。産地は広大なメープルの森に覆われたカナダ東部に集中しており、オンタリオ州にもたくさんのシュガーシャック(シロップを作る砂糖小屋)をもつ農家が点在しています。
樹液が収穫されるのは、春。3月上旬から4月中旬にかけての4〜6週間のみ。冬の間、マイナス30度にもなる寒気の中で眠っていたメープルの木は、雪解けとともに目覚め、地中からぐんぐん水を吸い上げ、根元にたまっていた栄養分を含む樹液が太い幹から枝へと巡り始めます。その春先の新鮮な樹液だけが、メープルシロップとなるのです。
収穫方法はとてもシンプル。木々の1本1本に深さ7cmほどの穴を開け、そこにタップといわれる蛇口状の器具を差し込みます。伝統的なスタイルでは、ここから自然に流れ出す樹液をバケツにうけ、それを馬車で集めていました。もちろん今はもう少し効率的で、タップにチューブをつなぎ、ポンプで集める方法が主流です。広大なメープルの森に、無数のチューブが張り巡らされている様子は、まるで森の中を駆け抜けるハイウェイみたいでなんとも壮観です。
もちろん木々はとても大切に育てられます。樹液を採るのは、樹齢25〜40年以上のたくましい木のみ。そして1本の木から1シーズンに採取するのは、35〜50Lと樹液全体の10%にとどめ、木の成長を妨げないよう注意がはらわれます。

木の幹に穴をあけた瞬間、透明な樹液があふれだします。1日に2〜5Lが採取できます。

オタワ郊外のシュガーシャック「フルトンズ・パンケーキ・ハウス」にて

40分の1まで煮詰めて完成するシロップ

木からとったばかりの樹液は、無色透明。水のようにサラサラです。この時点での糖度は3%程度。口に含んでもほぼ無味無臭です。あの褐色で濃厚なシロップになるには、ここからが大変。専用の大きな蒸発器に入れて、ひたすら煮詰めていきます。時間をかけ水分を飛ばし、40分の1の量、糖度66%まで濃縮するのです。このため1本の木から作られるシロップはほんの1L程度。なんとも貴重です。
カナダ政府はこの特産品のメープルシロップの品質を維持するため、さまざまな規定を設けています。たとえば

  • ●100%メープルの樹液を凝縮したものであること
  • ●66%の糖分が含まれていること
  • ●決められた衛生管理条件下で作られていること

など。この規定をすべてクリアしたシロップだけが、カナダ産メープルシロップとして認められるのです。
また完成したメープルシロップは、3つのグレードに分け、その中でさらに5段階のカラークラスに分けて表示するよう規定されています。これはシロップの色の濃さによって決定されるもの。おもにシーズン初期に収穫されたものは色が薄く、後半になるほど濃くなりますが、色の濃さによって味や香りも異なり、また用途も異なってきます(表参照)。いずれにしてもこれらの表示がカナダ政府認定の本物のメープルシロップである証拠。さらにそれを参考に好みや目的にあった製品を選ぶことができるというわけです。

グレード カラークラス 光の透過度 特徴 用途
Canada No.1 Extra Light
エクストラライト
75%以上 デリケートな味わい ヨーグルトなどのトッピングに
Light
ライト
60.5〜75% あっさりとした味わい パンケーキなどのトッピング、
コーヒー・紅茶の甘味
Medium
ミディアム
44〜60.5% 香り味共にマイルド あらゆる料理に幅広く
Canada No.2 Amber
アンバー
27〜44% コクのある濃い味わい 煮込みやソース、マリネ、
パンなどの料理用に
Canada No.3 Dark
ダーク
27%以下 濃厚でクセが強く業務用 食品やタバコの香り付け
など加工用に

採取された樹液は専用の蒸発器で煮詰められます

左からエクストラライト、ライト、ミディアム

もっとも一般的に出回っているのが、Canada No.1 ミディアム。多用途に使えます。

シュガーシャックで行われる素朴な収穫祭

オンタリオ州のメープルシロップ農家の中には、レストランやブティックを設け、アトラクション施設として開放しているところもたくさんあります。とくにオタワの南に広がるラナーク・カウンティは、オンタリオ州の「メープルの都」とも言われる特産地で、こうした施設も数多く点在しています。
3〜4月の収穫シーズンはひときわ賑やか。シュガーシャックに地元の人々が集まり、素朴な収穫祭が行われています。昔ながらの馬ゾリで森の中を巡ったり、雪が残る木々の間を散策して楽しんだり。レストランでは、パンケーキをはじめ、ベイクドビーンズやミートボールなど、伝統的なメープル料理を楽しむことができます。
また、トロントの西1時間ほどのところにある街エルマイラでは、4月上旬に恒例のメープルシロップ・フェスティバルも開催されます(2009年は4月4日)。こちらは街全体で盛り上がる賑やかな収穫祭。中心地に屋台が名が並び、コンサートなどのイベントも繰り広げられます。お目当ては、パンケーキなどの料理、そして煮詰めたシロップを氷の上で固めた「メープルトフィー」。
いずれも春を告げる伝統的なお祭りとして、地元の人々に親しまれています。

ラナーク・カウンティにあるシュガーシャック「ウィーラーズ・パンケーキ・ハウス」の伝統的メープルシロップ料理

煮詰めたメープルシロップを雪の上で固めて食べるトフィーは大人気

メープルシロップでヘルシークッキング

ところで、メープルシロップ=パンケーキ用と思っている人は多いようですが、実は他にも使い道がたくさんあることをご存じでしょうか。たとえば、コーヒーや紅茶に入れるだけで、とびきり風味のよいドリンクができあがります。またヨーグルトやアイスクリームのトッピングにもぴったり。砂糖と同じように使えますから、パンやジャム作りにも最適。さらに蜂蜜のような感覚でバーベキューソースやドレッシングの隠し味としても使えるし、みりん感覚で照り焼きなど和風料理に加えても、少量でおいしく仕上がります。
砂糖やはちみつに比べカロリーは低く、またカリウムやカルシウムなどミネラルが豊富。ダイエット食品、健康食品としておすすめです。

メープルシロップ料理に興味ある方は「メープルシロップレシピBOOK」も是非ご覧下さい。

バニラアイスクリームにかけるだけでも新しいおいしさ!