Ontario Style Special Contents Vol.18 トラベル・ライターヨシザワのオンタリオ取材ウラ話 Vol.5

オンタリオに20年以上通い続けるトラベル・ライターのヨシザワです。
広大な原野をドライブし、ふと目にとまった風景や小さな店に立ち寄ってみる、そんな気ままな旅が気に入っています。行き当たりばったりに動いても、新鮮な出会いや驚きがあるのがオンタリオ州の魅力。
この特集ではそうした思いがけない発見や出会いを中心に、取材エピソードや各地にまつわるウラ話をご紹介します。

知るほどにおいしい! オンタリオワインの話

カヤックで五大湖に挑んだり、スノーモビルで雪原を疾走したり、とかく体力勝負のワイルドな体験が多いのが、カナダ取材の醍醐味。けれど時にはインドア系のお仕事だってこなします。その代表格が、オンタリオワインに関する取材。朝からワイナリーを訪れて施設を見学。そしてテイスティングに次ぐテイスティング。1日に6〜7カ所もめぐることだって珍しくなく、これもある意味体力勝負というか、肝臓勝負ではあるのですが・・・。
もっともワインが大好物の私にとっては、これはまさにご褒美のような仕事。そんなわけで、これまでオンタリオ州各地のワイン産地をひときわ意欲的に精力的に、くまなく取材してきました。
今回は、オンタリオワインの魅力やその選び方、楽しみ方など、詳しくご紹介します。各ワイン産地(ナイアガラ半島プリンス・エドワード・カウンティピーリー・アイランドエリー湖北岸)のページも合わせてご覧下さい。

ワイナリーをめぐって
次々とテイスティング!

ソーヴィニヨンブラン、リースリング、シャルドネなどが代表的な白の品種

大量生産しない、丁寧なワイン

オンタリオ州でワインの生産が本格的に始まったのは1970年代。世界的なワインブームもあり、とくにここ20年ほどで生産量は急増しました。現在では140ヶ所のワイナリーが集まる、カナダきってのワイン産地です。
とはいえ、冬の寒さが厳しいオンタリオでは、生産地は南部のオンタリオ湖やエリー湖の周辺に限られています。そのため、トータルの生産量は少なく、州産ワインすべて合わせても、オーストラリアやカリフォルニアの巨大ワイナリー1社分にもかないません。しかも、冬の霜よけのために、秋にはブドウの木の根本に土を盛ったり、巨大な扇風機で上空の暖かい空気を循環させたりと、他の産地以上に労力も時間もかかります。
そこまでしながらこの地でワインが作り続けられているのは、もちろん最高のワインブドウを育てられる土壌があるからです。少量ながら、手間隙をかけ丁寧に作られた良質なワイン、それがオンタリオワインの魅力です。実際、最近では世界各地のワイン品評会などで数々の賞を受けるなど、その質の良さが認められ、プロの間ではかなり高い評価を得ています。また、冬の寒さがあるからこそできるアイスワインなどは、すでに世界最高級のレベルとして知られています。

プリンス・エドワード・カウンティでは、石灰質のゴツゴツとした土壌が上質のピノノワールなどを作ります

手作業でブドウ作りを行うワイナリーは少なくありません

オンタリオのほとんどのワイナリーがアイスワインを生産

ラベルに注目! VQAとアペレーション

では具体的に、どんなオンタリオワインを選べばいいのでしょう。まずチェックしたいのは、ボトルに張られたラベルです。そこにVQAのロゴがあれば安心。VQAとは、オンタリオ州のワイン品質管理同盟(Vintners Quality Alliance)のことで、州産のワインの品質を保ち、またさらに向上させるために、ブドウの育成からワイン作りの細部にいたるまで、厳しい基準を設けて監督する政府公認の組織。その基準をすべてクリアしたワインだけが、VQAワインとして認められ、ラベルやボトルネックにその“お墨付き”のロゴを入れることが許されるのです。
またVQAでは、オンタリオ州内に4か所のアペレーション(指定ワイン産地)を定めています。それは、ナイアガラ半島プリンス・エドワード・カウンティピーリー・アイランドエリー湖北岸で、ナイアガラ半島に関しては、その内部の土壌や気候などの違いによって、さらに12のサブアペレーションに区切っています。アペレーションやサブアペレーションごとに気候や土壌は微妙に異なるため、出来上がるワインにもそれぞれの特徴が反映されます。
ラベルには、このアペレーションを明記することで、そのワインがどこのブドウから作られているか分かるようになっています。たとえば、州内のいろいろなブドウをミックスしてあれば『VQA Ontario』、ナイアガラ半島のブドウで作られたものなら『VQA Niagara Peninsula』、ナイアガラでもひとつのサブアペレーション内のブドウだけで作ったワインなら『VQA Niagara River』・・・といった具合に、その出自が記されているのです。もちろんこのほか生産年や生産者、そしてブドウの種類、そして時には畑の場所まで、さまざまな情報がその中にギッシリと詰まっています。ラベルの読み方が少しでも分かると、ワインの楽しみ方もより奥深くなり面白くなっていきます。

さまざまな情報が刻まれているワインラベル

テロワール(その土地の風土)が
ワインの個性を決定します

ブドウ作りから醸造のすべての段階まで、
VQAが詳細な基準を設定

ワインのスペシャリストがおすすめする、オンタリオワインの楽しみ方

「オンタリオのワインは生産量自体が少なく、ほとんどはカナダ国内で消費されます。海外にはほとんど輸出されていない。だからこそ、ここに実際に訪れてワイナリーを巡る価値があるのです」。
というのは、ワイン・ジャーナリストのデイビッド・ローラソンさん。カナダの新聞やワイン専門誌などでワインに関する数々のコラムを執筆し、またカナダ・プロフェッショナル・ソムリエ協会の会長も努めるカナディアン・ワインの第一人者。世界のワイン産地を訪れ、研究を重ねてきた彼にとって、カナダ・オンタリオワインの魅力は「フレッシュでフレンドリー」なことだといいます。
「それを実感するには、まずワイナリーを訪れてみること。実はワインのうんちくなど、どうでもいいのです。ワイナリーのオープンな雰囲気を楽しみながら、テイスティングをしてそれぞれのキャラクターを感じてほしい。これは好きだとか、どんな印象かとか、自分の感覚で判断すればいいのです。そして風景や土地を見て、味と旅の経験をリンクさせる。そんな風に楽しんでほしいですね」。
実際、産地を訪れてみると、家族経営のような小さなワイナリーもいっぱいあります。また、少ししか作っていないので実際にワイナリーのブティックで販売するだけで、リカーストアでも買えない、というワインも少なくありません。しかも、それが飛び切りおいしかったりするのです。オーナー自ら工場や畑を案内してくれることもあり、そんなカナダならではのフレンドリーさは、デイビッドさんが言うとおり、ワインの味わいにも反映されているような気がします。
ワインをテーマにゆるりと過ごす休暇。そんな「オンタリオスタイル」な旅は、ちょっと病みつきになるかもしれません。

1年間に5000種類のワインを試すという
ワインジャーナリスト、デイビッド・ローラソンさん

ワイナリーはどこもオープンでカジュアルな雰囲気

ブドウ畑を眺めながらのんびりとワイナリー巡り