岡田知子

オンタリオ州観光局日本事務所 岡田知子です。メディア担当をしています。

コトの始まりは、オンタリオスタイル編集部ヨシザワが無計画に発したひとこと「今度ナイアガラを走る」でした。なぜかこれにつられて「じゃ、私も走る!」と宣言してしまったのが、オンタリオ州観光局のオカダだったのです。無謀にもフルマラソンにエントリーしたふたり。トレーニングも開始しました。
ところが、大会数カ月前のある日、ヨシザワからオカダ宛に1本のメールが。「ヒザが壊れました。走れません・・・」。というわけで、言いだしっぺがリタイアし、ひとりで走る羽目になったオカダ。「体育会系でもないのに・・・なんで私が」と半ばやけっぱちでナイアガラに挑むことになったのでした。

オンタリオ州のPRを担当する観光局スタッフが、体を張って体験した2010年のナイアガラ・フォールズ国際マラソン。罪ほろぼしをこめて、ヨシザワはカメラを持ってオカダに同行。大会の様子をつぶさにレポートしてまいりました。ちょっと恥ずかしい大失敗&騒動もバラしちゃいます。今年参加しようと思っている方、ぜひご参考に!

前日にレジストレーション、そして出入国の手続きも

オカダとヨシザワがカナダに飛んだのは大会の3日前。ナイアガラの街にゆっくり滞在し、滝を眺めながら体調を整えることに。そしてマラソン前日、スカイロンタワーで開催されている「ヘルス&フィットネス・エキスポ」でランナー登録。大会参加者には、ビブをはじめ、タイムの記録用に使うチップなどが渡されます。そしてエナジーバーや記念品がたっぷりはいった「グッディーバッグ」も受け取ると、「いよいよだね!」という雰囲気に。

様々なランニングウエアも展示されるエキスポ

ランナー登録をして、グッディーバッグをもらいます

会場にはカナダのパスポートコントロールのカウンターも出ています。というのも、この大会は、世界で唯一、国境を渡る国際マラソンだからです。42.195kmコースのスタート地点はアメリカのバッファロー。ゴールはカナダのナイアガラの滝。カナダから参加する場合、まず国境となるナイアガラ川の橋を渡ってバッファローまで行き、スタート後は再び橋を渡ってカナダに戻ってくることになります。このため、カナダとアメリカの出入国審査を事前に行っておく必要があるというわけです。

ここを入ってカナダのパスポートコントロールも

前日はこのほかにもパスタパーティなど、様々な関連イベントが

マラソン当日(2010年10月24日) 07:00 日本人参加者のバスで出発!のはずが・・・

いよいよ当日の朝です。スタート地点のバッファローまでは大会の日本事務局が用意した日本人参加者向けのバスに乗せていただくことに。はやる心を抑えてバスに座っていると、事務局のスタッフが最終確認にやってきました。「みなさん、パスポートと緑色の用紙はお持ちですね?」

「エッ!? 緑色? 何それ?」と驚くオカダ。パスポートはあるけれどそんなものはない!
聞けば、マラソン大会といえどもアメリカ国境を行き来するには、I-94という出入国記録カードが必要になるといいます。マラソン大会では大勢が一斉に入国するため、当日の朝全員の手続きをするのはムリ。このため、前日までに一度アメリカに入ってI-94を取得しておくよう、日本事務局がお知らせしていたというではありませんか。昨日のエキスポ会場にあったパスポートコントロールは、カナダ側のだけだったようなのです。

「しまった!」とあわててバスを飛び降りるオカダ。カメラを抱えて後に続くヨシザワ。実は、ずいぶん早い段階にマラソン大会本局のウエブサイトでエントリーを済ませていたため、日本事務局のウエブサイトをちゃんとチェックしておらず、I-94など気にも留めていなかったのです。空路入国に必要なESTAさえ持っていればOKとタカをくくっていました。オンタリオ州観光局担当者、そしてオンタリオスタイル編集スタッフのチームとしては、あり得ない大失態。このまま乗っていたら、アメリカ入国手続きにバスごと巻き込み、みなさんに大迷惑をかけるところでした。なんてこった!

様々なお手伝いをしてくれる日本事務局のスタッフ。この方たちの情報がなかったら大変なことに・・・

早朝、スタート地点へのシャトルバスに乗るため集まった日本人ランナーのみなさん。日本からの参加も年々増えています

07:45 ピースブリッジのアメリカ入国審査場へ

そんなわけでバスを降りた2人ですが、まだあきらめたわけではありません。たまたま近くにいたタクシーを拉致するように捕まえ、そのまま国境にあるピースブリッジの入国審査場へと急行しました。どれだけ時間がかかるかわかりませんが、とにかくI-94をゲットしてバッファローに行かなくては。

入国審査場は早朝ということもあり、ガラガラ。ところが、案の定スムースにはいきません。緑の紙をもらうのに、やたらと時間がかかります。おまけに申請料の$6を支払う機械が故障。イライラしながらも待つしかありません。「間に合わなかったらどうしよう。みんなになんて言おう・・・」とドキドキのオカダです。

09:00 お騒がせしました! スタート地点に合流

I-94の手続きには結局1時間以上かかり、アメリカ側に入れたのは9時少し前。スタート地点のアルバート・ノックス美術館まで、再びタクシーを飛ばしてなんとかたどり着くと、すでに大勢のランナーが集まっていました。さきほどバスで一緒だった方たちが、突然消えた2人を心配してくださっていました。皆様、大変お騒がせいたしました!

さて、オカダはというと、ここまでの騒動でなんだか一仕事終わってしまったような、妙に落ち着いた表情に。「もう、走れるだけでありがたい」と初マラソンの緊張感からは解き放たれてしまったようです。これぞケガの光明というべきでしょうか。ランニングウエアのファッションチェックをしたり、ゲストランナーとして参加していた猫ひろしさんを見つけて一緒に写真を撮ったり。なんだかすっかりリラックスしています。

スタート地点となるバッファローのアルバート・ノックス美術館

ゲストランナーの猫ひろしさん、そして他の日本人ランナーの方と記念撮影

10:00 そしてついにスタート

スタートラインに大勢の人が集まってきました。大会全体の参加は約5,000人。多くの人は、5km、10km、ハーフなど、カナダ側の易しいコースを楽しみながら走るようです。ここにいるのはフルマラソンを走る1,000人ほど。いきなりこれに参加してしまったオカダはかなりのチャレンジャーです。
カナダとアメリカの国家が斉唱され、いよいよスタート。トップの人たちは猛スピードで走りだしていきます。オカダは、かなり後方から、笑顔でのスタート。もとより記録狙いではなく完走が目標です。がんばれー。

緊張のスタート。前列に並ぶ人たちは真剣そのもの

オカダもいい笑顔でスタートしました

10:47 6.4km地点 ピースブリッジ

走れないヨシザワはタクシーを飛ばして、写真を撮るために先回り。まず最初の撮影ポイントに選んだのは、国境のピースブリッジです。ほどなく先頭集団が現れました。みんなマラソンとは思えないほどのスピードで駆け抜けていきます。そのあと、ちょっとゆっくり目のペースで大勢のランナー集団が現れました。次から次へ、途切れることなく橋を渡っていきます。そんな中に、オカダの姿も発見。思った以上に前の方につけています。まだまだ笑顔で元気いっぱい。こちらに手を振る余裕も見せてくれました。

オカダもエネルギーいっぱい

続々と橋を渡って国境を越え、カナダに入っていくランナー

12:20 24km地点 まだまだ余裕

橋を渡りカナダ側に入ってからは、ナイアガラ川沿いに伸びるナイアガラ・パークウェイを延々と走ります。普段は水辺の風景と木立が美しい絶好のドライブルート。この道路を走れるのはなんともぜいたくですが、風景を楽しめるかどうかはランナーの余裕次第。

2度目の撮影ポイントは24km地点の給水所。最初は固まっていたランナーも、ここまでくるとかなりバラバラに。オカダの姿は思ったよりもずっと早くに登場しました。なんだか楽しそう。景色を楽しむかのように快調に走っています。コース半分を越えたこの地点でタイムは2時間20分。これはかなりのいいペースです!

コースには25カ所の給水所が置かれ、スタッフがコップを手渡ししてくれます

快調に飛ばすオカダ。いい調子です!

13:38 35km コースも佳境に

コース後半、川の中州ネイビー・アイランドが見える辺りまでくると、かなりつらそうなランナーが目立ってきます。周辺にはメープルやポプラの木々が見事な紅葉を見せていますが、それどころではないといった表情もいっぱい。

しばらく待っていると、やってきました。オカダです。「アレ、歩いている?」 さっきまでのペースはなくなり、走ると言うよりは早足で歩いている感じです。下を向いて、ちょっと疲れている様子。と、コチラの存在に気付き、怠けているのを見つかった子供のように照れ笑いをして再び走り始めました。「歩いたっていいんだよ」とつい優しい言葉をかけたくなります。後で聞いたところによると、このあたりから太ももが痛くなり始め、かなりつらかったようです。まさに頑張りどころですね。

あ、歩いている・・・。周りの風景にも目がいかない様子

紅葉のナイアガラ・パークウェイ沿いに続くマラソンコース

14:52 42.195km ついにゴール

ゴールゲートはナイアガラの滝のほとり。トップ選手たちは、もちろんずっと以前にフィニッシュを果たしています。1位になったのはボストンのスティーブ・ボーハンさん。2時間27分48秒という記録でした。日本人のトップは10位で2時間49分28秒。なんとあの猫ひろしさんが快挙です。

ゲートでは、途切れなく次々とランナーが飛び込んできます。会場には、その都度ひとりひとりの名前がアナウンスされ、喝采を浴びます。オカダはまだ見えません。かなりつらそうでしたが、ここまでたどりつけるでしょうか・・・。ゲートで待つヨシザワがちょっと不安になってきた、そのときです。
「トモコ・オカダ、フロム・ジャパーン!」と待望のアナウンス。続いて本人の姿が現れ、両手をあげてゴールに走り込んできました。満面の笑み。やった!オカダ、完走です。ギャラリーからは暖かい拍手。大会スタッフから完走記念のメダルを首にかけてもらったものの、走り終えた本人は全身で喘ぐような呼吸。最後は夢中だったようです。
タイムは4時間52分05秒! なんと、5時間をきりました。完走者1,051人中766番目のゴールです。感動的! 思い切りほめてあげたい!

ついにゴール!嬉しそうです (Photo : Niagara Falls Tourism / Makoto Hirata)

立派なタイムも樹立!

ゴール直後に首にかけてもらった完走メダル

実は、ゴール直後にあえぎながらオカダが漏らした言葉は、「も〜、いい。も〜、走らない!」でした。ホントにつらかったのでしょう。ところが帰国後ほどなくして、週末のトレーニングを復活した様子。初マラソンで、走ることに結構はまってしまったのかも。
もしかしたら、今年も行くのかな? 今度はアメリカ出入国も事前にばっちり手続きして、さらに気持ちよく走りましょう!

大会を終えた夜。足に湿布薬を貼りまくって、完走祝い

オカダです。完走しました!

振り返るとかなりの珍道中。いろんな人にマラソン出場を吹聴してきたのに、I-94のせいでスタート地点にも立てないかも・・・と、当日の朝はかなり焦りました。ですがこれで緊張がほぐれたのも事実。20キロ地点まで楽しんで走れ、その後は足の痛みに耐えながら歩いたりしたものの、なんとか完走。トレーニング中にいろんな方がアドバイスをくださったおかげです。でも、走っている最中にもストレッチをというアドバイスはなかったな〜(コレ、必要です)。とにかく、練習も含め走るって楽しい! と思いました。みなさんもぜひナイアガラを走ってみませんか。