Ontario Style Special Contents Vol.38 フリーライター戸谷美津子レポート オタワで学ぶ、暮らす、世界を広げる! カリタス女子高等学校の「カナダ研修」

国際理解教育の一環として、海外での修学旅行や語学研修を実施する学校が増えています。神奈川県にあるカリタス女子高等学校でも2011年の夏、高校1年生を対象に恒例の「カナダ研修」(19日間)を実施しました。
前半はケベック州でカリタス学園のルーツをたどる旅、後半はオンタリオ州にある首都オタワでの語学研修とホームステイが目的です。オタワに滞在したのは12日間。私立中高一貫校を紹介するフリーマガジン『スクール』のフリーライター・トタニが、3日間密着取材した様子をレポートします。

オタワでは英語とフランス語が両方学べる!

「カナダ留学」と聞いて多くの人がイメージするのが、雄大な自然と素朴で優しいカナダの人々との触れ合いでしょう。まさにその通り、カナダが教育旅行のデスティネーションとして人気が高いのは、安全であること、美しい自然が身近にあることに加え、移民の国であるため他の国から訪れる人々に対しても寛容でホスピタリティに溢れていることが理由です。
中でもここ、オタワは、オタワ川を挟んでフランス語圏(ケベック州)と隣り合っており、また首都でもあるため多くの人がカナダの公用語である英仏2ヶ国語のバイリンガル。カリタス学園のように中学・高校でフランス語も学んでいる学校にとっては、英語とフランス語の両方が学べるという利点があります。また博物館や美術館などの文化施設が充実しているのも首都ならではです。生徒たちは水と緑あふれる美しい文化都市オタワでの語学研修とホームステイを、思い切り謳歌していました。

1日目 (8月3日 水曜日)

『カナダ文明博物館』は人気のテーマパーク。バディの周りは笑いがいっぱい!

オタワ滞在の目的の1つは、オタワ大学での語学研修です。カナダではESL(外国人を対象とした英語学習プログラム)が文部省によって規定されていて、公立、私立を問わず充実した語学研修が受けられます。今回カリタスはオタワ大学で5日間、午前中に英語とフランス語の語学研修を受けました。
すでにオタワ生活をスタートさせ、すっかり楽しんでいる様子の生徒たち。後乗りの私は、この日、午後のアクティビティで訪れた『カナダ文明博物館』で初めて彼らと合流しました。開拓や建国の歴史、先住民の文化などを展示した国内最大の博物館は、まるでテーマパークのよう。グループごとに先生の英語による説明を聞きながら約2時間見学。3階の『カナダホール』では、カナダの歴史にそって、各時代の様々な表情が再現されています。英仏の入植時代を支えたイギリスやフランスの漁業ステーションや毛皮の交易所、西部開拓時代のバーや薬局、ダンスホールなど、実物大模型を訪れながらカナダ1000年の歴史を辿る旅を楽しみました。
オタワ滞在で欠かせないのが「バディ」と呼ばれる同年代の地元学生たち。授業はもちろんすべてのアクティビティに同行し、生徒たちをフォローしてくれる頼もしい存在です。博物館でも生徒たちは見学の一方、バディと話すのが楽しくて仕方ない様子です。英語やフランス語を教わったり簡単な日本語を教えたり、バディの周囲には笑いが絶えません。

カナダ文明博物館。先住民の建築家ダグラス・カーディナルによる建物で、正面は人の顔を、そして建物全体でカナダの地形を表現しています

世界最大級のトーテムポールコレクションや先住民文化が展示された博物館を、英語の説明を聞きながら見学

英語やフランス語を話す事にも慣れてきました。同年代の「バディ」だから、共通の話題もいっぱい

ホームステイは、習った言葉がすぐに使えるから楽しい!

見学を終えた生徒たちに「週末は何をしたの?」と聞いたところ、「ホストファミリーと一緒にアミューズメントパークに行ったり、ロッククライミングをしたりして遊びました」「ママがショッピングセンターに連れて行ってくれました」と、すっかり家族の一員として過ごしたようでした。
「学校で習ったことがすぐに使えるから嬉しい!」「家族が日本に興味を持っていたので、電子辞書を使いながらお互いの国の文化を教え合いました」という言葉に、語学研修とホームステイの成果を感じます。
オタワ滞在中は、各プログラムの集合・解散場所へはたいていホストファミリーが車で送迎をしてくれます。この日の夕方も、解散場所のオタワ大学へ次々と家族が迎えに来てくれました。中にはバスを乗り継いで登下校する生徒もいますが、「慣れたから大丈夫」とのこと。とはいえ、こんな失敗談も話してくれました。
「この前ショッピングセンターに寄った帰り、バスを間違えてそのまま終点まで行ってしまいました。もう訳分からなくて悲しくて泣いていたら、バスで一緒だった老夫婦が『どうしたの?』って話しかけてくれたんです。訳を話したら『それなら送ってあげよう』って、家の玄関まで送ってくれて家族に挨拶までしてくれました。おまけに『こんど迷子になったらここに連絡しなさい』って、連絡先を書いた紙をくれました。カナダの人の優しさがほんと〜〜に身にしみました」。

ホームステイのそっくり親子!? パパは送迎担当、息子はバディとしてオタワ滞在中の生活をフォローしてくれました

研修がある日は毎朝9時に大学に集合。「昨日何をしたの?」ミーティング前のおしゃべりタイム

フランス語のクラスの生徒たち。髪に結んだ黄色いリボンはグループの色

2日目 (8月4日 木曜日)

少人数クラスでの語学研修。ベテラン教師の授業は楽しく効果的

今日は語学研修4日目です。朝のミーティングでいつものように2、3の注意事項が伝えられたあと、サプライズが! 今日誕生日を迎える松岡さんへ「Happy Birthday〜♪♪」の大合唱が始まりました。プレゼントは超特大クッキーで、授業の後にみんなで分けて食べました。
さて、肝心の授業です。「日本と何が違うのかな?」そう思いながら英語とフランス語、すべてのクラスを見学しました。感じたのは教師の質が高いこと。今日が初めてという教師は家族の写真を見せながら自己紹介し、その後「Talking Ball」と名付けたボールを順番に手渡しながら、生徒たちも自己紹介をしていました。またあるクラスでは「ノーズ・ピアス」「ロックミュージック」など身近なテーマに対して「反対・賛成」「好き・嫌い」の理由を述べていました。別のクラスでは「昨日したこと」を順番に発表。講義を聴くだけでなく、「考えて発言する」機会を多く作り、教師がそれを上手にフォローしながら授業はとても効果的に行われていました。一緒に授業に参加しているバディたちも発言したり、プレゼンテーションのスピーチのアドバイスをしてくれたりと大活躍。どのクラスも生徒たちが生き生きとした表情で授業を受けているのが印象的でした。

授業中に大きなバースデー・クッキーが届けられました

留学生に慣れたベテラン教師が、楽しい雰囲気で授業を進めていきます

スピーチをチェックしてくれるバディ。アジア系、アフリカ系、ヨーロッパ系…バディのルーツが様々なのが、まさにカナダです

コミュニケーションの基本は相手の目を見て話すこと。マンツーマンの会話練習で語学力アップ!

お弁当にもお国柄。まるで食の博覧会のよう

「おやつを買いに行こう!」
休憩時間になると生徒たちは大学の売店で、カナダならではのスナック菓子や飲み物を探して楽しんでいます。そして後半の授業のあと、ランチは公園の芝生の上で。サンドイッチ、ピタパン、中華風…etc。お弁当にもホストファミリーのお国柄が表れていて、改めてカナダが移民の国であることを実感します。
午後、生徒たちと分かれて『カナダ自然博物館』へ行ったら、ホストファミリーと一緒に見学に来た生徒にバッタリ。ショッピングセンターでも、両手いっぱい買い物袋をぶら下げている生徒たちにまたバッタリ。
「日本の家族へのおみやげです」「昨日の夜はホストファミリーが国会議事堂のライトアップを見に連れて行ってくれました。カナダの歴史がナレーションと一緒に表現されていて見ごたえがありました」と生徒たち。ファミリーのホスピタリティに包まれて、オタワでの生活を楽しんでいる様子が伝わってきました。

広〜い大学構内のどこでもがランチスペース

芝生の上で食べるランチの味は格別。自分で作ってくる生徒もいました

古くから続く歴史的な市場「バイワード・マーケット」でショッピング。お店の方との会話も弾みます

国会議事堂の壁面がスクリーンとなって、壮大なカナダの歴史が映し出される「サウンド・アンド・ライトショー」は、オタワの夏の風物詩

3日目 (8月5日 金曜日)

自然の中でアクティビティを満喫。「何もしなくてもいい」はカナダ流?

今日は丸一日、オタワ郊外にあるガティノー・パークで過ごす日。空も雲ひとつなく輝き、絶好のピクニック日和です。
「Today is a fun day!!」
バスに乗ったとたん引率の教師がテンション高く宣言し、すぐにビンゴ大会が始まりました。「ビンゴ!」のたびにバス中が歓声に包まれて、あっという間の30分でした。
さて、オタワ市民の憩いの場所であるガティノー・パークに到着。公園といっても山あり森あり湖ありの雄大な自然が広がっているだけで、売店も自販機もないところが日本とは大違いです。
ここで何をするのかというと、学校からのリストには、「スイミング、カヌー、ペダルボート、バレー、サッカー、ミサンガ作り」と様々なアクティビティを用意しているとのこと。ですが、「“何にもしない”もありですよ」という教師の言葉に、カナダ的なおおらかさを感じます。
水着に着替えてさっそく湖で遊び出す生徒たち。見よう見まねで始めたカヌーも、次第に息を合わせて漕げるようになり、「わぁ、魚がいるいる、いっぱいいる!」という声も聞こえてきます。
そのうち、どのクラスも「さよならパーティー」で披露するダンスの練習を始めました。音楽に合わせ、オリジナルな振り付けのダンスは迫力満点! 周りのカナダ人たちも何が始まったのかと注目しています。
思い思いにランチを食べた後は、再びアクティビティの時間です。カナダの雄大な自然の中で過ごすひとときは、語学研修が続いたあとのホッと一息、素敵な休日。みんなちょっぴり日焼けして帰路につきました。

オタワ川の対岸、ケベック州にあるガティノー・パーク。オタワから気軽に足を延ばせる癒しスポット。湖のほとりには監視員もいて、安心して遊べます

カヌーに挑戦! 漕ぐうちにだんだん息が合ってきます

バディはここでも人気者。自然の中だと会話も弾んでくるみたい

クラス全員でダンスの練習。のびのび、がんがんいっちゃいます!

「言葉は気持ちがあれば通じる!」「世界には色々な人がいる」をホームステイで実感

さて、オタワでの目的のもう1つはホームステイです。さっそく夕方に2軒のファミリーを訪問しました。
1軒目は根本はるかさんのファミリーです。根本さんは高校でフランス語を選択しているため、ホームステイではフランス語を話す家庭を希望しました。家族はオタワ大学で働くマザーと17歳のアリッサの2人で、閑静な住宅街の一角に住んでいます。
「家ではできるだけフランス語を話しています。単語を並べただけでも分かってくれるし、忘れた場合は英語で聞きます」と根本さん。「はるかのフランス語はまだ長い文章は話せないけれど、毎日確実に上達しています。はるかの説明でオリガミとチヨガミの違いも分かりました」とマザーが微笑みます。アリッサには時々フランス語の宿題を手伝ってもらい、週末はオメガパークやアッパーカナダヴィレッジなどに出かけるなど、まるでこの家の娘のように暮らしています。
2軒目はガイアナ(南米)出身のファーザー&マザーと暮らす和田頼子さんのファミリー。英語留学中のフランス人学生マリーンも同居しています。
「イスラム教の家族だと聞いたとき、私はキリスト教だし、正直“どうしよう!?”って思いました。でも、マザーもファーザーもとても優しくていい人たち。宗教の違いなんて何でもないんだとすぐに思いました。家族ともマリーンとも毎日英語で色々なことを話していますが、特に不自由は感じません。マリーンは一人っ子の私にとって、何でも話せるお姉さんみたいな存在です」。
そう元気に語る和田さん。ガイアナ出身の家族と、フランス人、日本人の留学生が屈託なく英語で話し笑い合っている様子を見ていると、まさに英語が世界の共通語であること、その英語も伝えようという気持ちさえあれば伝わるんだということを実感します。折からラマダンの時期で、マザーもファーザーも日が出ている間の食事はとりません。それでもいつも2人に美味しい食事を用意してくれ、この日も柔らかく煮た鶏肉料理を、私たちにも笑顔でふるまってくれました。
「ここの生活が大好き! 日本に帰ったら絶対カナダシックになっちゃう」と和田さん。オタワでの体験から和田さんは何を学ぶのだろう? それは将来にどのように影響するのだろう? 思わず母親のような気持ちになりつつ、温かな雰囲気あふれる家を後にしました。

ピアノの楽譜を見つけて披露する根本さん。「音楽」も共通言語です

アリッサはママよりもフランス語が上手。頼むと宿題を見てくれます

和田さんのファミリー。パパのシェイクは公務員をリタイアしたばかり。ママのビビと共に広々とした家に暮らしています

マリーンは何でも話せるお姉さん。留学はその国の人だけでなく、様々な国の人と触れ合えるメリットがあります

語学研修の体験は、頑張った人ほど「生きる力」が養われる!

たった3日間の密着取材でしたが、オタワで暮らす生徒たちの姿から多くのことを感じました。彼らは語学を学んだだけではありません。むしろ多民族の国カナダで生活してみることで、「世界には色々な人がいる」ということを、身をもって実感した、その意義こそ大きいのではないでしょうか。
またホームステイでは、言葉のギャップを埋めつつ、お互いを表現し理解しようと努力します。文化も違えば誤解なども生まれるでしょうが、それを解決するために頑張ってみる。そんな体験こそ、その後のその人の「生きる力」になっていくと思うのです。
様々な人種の人々が共生して暮らすカナダ。その真ん中にある文化都市オタワ。語学力を磨き広い世界と触れ合うために、あなたもオタワで学んでみませんか?