Ontario Style Special Contents Vol.50 これぞカナディアン・アート!グループ・オブ・セブンに出会える美術館へ

カナディアン・アートを語るとき、必ず登場する名前がトム・トムソンとグループ・オブ・セブンです。20世紀初頭、トロントをベースに活躍し、カナディアン・アート・シーンに一大旋風を引き起こしたアーティストたち。オンタリオにある彼らゆかりの美術館で、そのダイナミックな作品に出会ってみませんか。

カナダの自然そのもの! 独自のアートを確立したホットな芸術家集団

「グループ・オブ・セブン」は、1920年に誕生したモダンアート集団です。メンバーは、フランクリン・カーマイケル、ローレン・ハリス、A.Y.ジャクソン、フランツ・ジョンストン、アーサー・リスマー、J.E.H.マクドナルド、F.H.ヴァーレイの7名 (のちにメンバーの交代もあり、トータルでは10名が参加)。トロントで商業画家として生計を立てていた彼らは、ヨーロッパ芸術の模倣でしかない、旧態依然としたカナダのアートシーンに不満を抱く者同士として親しくなりました。自らを「カナダ派」と呼び、それまでにない独自のアート作品を発表するようになります。

グループ・オブ・セブンのメンバー

実際、彼らの手法はとてもカナダ的でアクティブでした。オンタリオの大自然の中に飛び出し、既成概念にとらわれず自由にスケッチをし、荒々しい風景を鮮やかな色彩で描き出しました。絵の具を厚く盛り上げた力強い作品群は、カナダそのもののワイルドな美しさが表現された、新鮮な迫力に満ちたものばかり。1924年には、イギリスの有名な展覧会ウェンブリー・エキシビションでも作品が発表され、その独自性は世界でも注目の的に。多くの支持を得た彼らの活動は、トロント美術館(現在のオンタリオ美術館)での作品発表を中心に1933年まで続き、後に続く若いアーティストたちにも多大な影響を与えました。まさにカナディアン・アートのエポックメーカーとなった集団だったのです。

Franklin Carmichael, Autumn Hillside
(Art Gallery of Ontario)

A.Y. Jackson (1882-1974), First Snow, Algoma, 1919/1920, Oil on canvas, 107.1 x 127.7 cm, In Memory of Gertrude Wells Hilborn (McMichael Canadian Art Collection)

Lawren S. Harris (1885-1970), Mt. Lefroy, 1930, Oil on canvas, 133.5 x 153.5 cm (McMichael Canadian Art Collection) 1975.7

J.E.H. MacDonald (1873-1932), Cathedral Mountain, 1927, Oil on paperboard, 21.4 x 26.6 cm, Gift of Mr. R.A. Laidlaw (McMichael Canadian Art Collection)

ちなみに、最初に自然をありのままに描くというスタイルを実行し、オリジナルメンバー達に影響を与えたのはトム・トムソンというアーティストでした。しかし彼はグループ設立の前、アルゴンキン州立公園でスケッチ中にカヌー事故で溺死。カヌーの名手だった彼の事故は現在も謎に包まれており、その存在は伝説化され、カナダでは今も知らない人はいないほど有名です。多くの美術館では、グループ・オブ・セブンとあわせて際立った形で作品が展示されています。

アルゴンキン州立公園でのトム・トムソン
(Archives of Canada MIKAN 3721120)

Tom Thomson, The West Wind
(Art Gallery of Ontario)

グループ・オブ・セブンが堪能できる美術館はココ!

Ottawa カナダ国立美術館 National Gallery of Canada

グループ・オブ・セブンを世の中に送り出したのはこの美術館ともいえます。20世紀初頭、グループ・オブ・セブンが設立する以前から彼らの作品を買い集めており、それをイギリスのウェンブリー・エキシビションに送りこみ、ブレイクのきっかけを作ったのもここでした。無名時代から彼らを支持してきただけあり、所蔵品も充実。2階(Level 1)のCanadian & Aboriginal Artのフロアに「Tom Thomson & Group of Seven」のコーナーが広く取られており、多くの作品を見ることができます。他のカナディアン・アートをはじめ、ヨーロッパやアジアまで、一流の所蔵作品が多いのも国立美術館ならでは。1日ゆっくりと時間をとって訪れたい場所です。

Toronto オンタリオ美術館 Art Gallery of Ontario(AGO)

1920年にグループ・オブ・セブンがデビューを飾った最初の展覧会から1933年の解散まで、彼らがホーム美術館として作品発表を行っていたのがここ(当時はアート・ギャラリー・オブ・トロントという名前でした)。2階にあるCanadian Art のコーナーには、細かく仕切られた小ギャラリーがいくつも続いており、グループ・オブ・セブンや彼らと親交のあったアーティスト、そしてトム・トムソンの作品がたくさん展示されています。またこのコーナーでは、美術館に多くの寄付を行った篤志家の「先入観を持たずに、直観だけで絵画を楽しんでほしい」という希望に従い、それぞれの作品名やアーティスト名を含む解説が省かれているのも特徴です。
カヌーをイメージしたガラス張りの壁面をもつ建物は、トロント出身の有名建築家フランク・ゲーリーの手によるもの。広い館内には、古今東西の作品79,000点を所蔵しています。

Toronto マクマイケル・カナディアン・アート・コレクション McMichael Canadian Art Collection

グループ・オブ・セブンと最もゆかりの深い美術館が、トロントの郊外にあるここ。もともとは美術愛好家のマクマイケル夫妻の邸宅だった場所で、夫妻が収集したトム・トムソンとグループ・オブ・セブンの作品を集めた個人美術館として1950年代にスタート。ふたりはグループ・オブ・セブンのメンバーと親交もあり、実際何人かはしばしばここを訪れ制作活動をしたといわれます。アーティスト本人たちから贈られた作品も含め、コレクションはかなりの数になったため、1965年に夫妻は美術館をオンタリオ州に寄贈。現在もグループ・オブ・セブンとトム・トムソンを中心にカナディアン・アートをテーマにしたユニークな公共施設として公開されています。
広々とした敷地内は公園のように美しく、ウォーキング・トレイルまで整備されています。一画にはグループ・オブ・セブンの6人のメンバーが眠る墓地もあり、またトム・トムソンのキャビンも移設されており、ファンにとっては聖地のような美術館となっています。