オンタリオに通い続けるライター、ヨシザワです。特集52に続き、オンタリオでのカヌー体験をレポートします。
今回ご紹介するのは、広大な森林の中に全長2000kmものカヌールートが巡る、アルゴンキン州立公園。大自然の中、初心者向けのレッスンも充実し、また手ぶらの旅行者でも簡単に楽しめるスポットも点在。そして飛び切りワイルドな奥地へのカヌーツアーなどもあり、だれもがそれぞれのレベルで楽しめる場所。ここはまさにパドリング・パラダイスです!

まずは地上でパドル操作をレッスン

カヌー初心者の私たちがまず申し込んだのは、公園内にある「アルゴンキン・アウトフィッターズ」のカヌーレッスンです。アウトフィッターとは、アウトドア用品の販売やレンタル、またレッスンやガイドツアーなどを行うお店で、公園内部をはじめ周辺にも何店かあります。
今回インストラクターを務めてくれたのは、オンタリオ出身で3歳のときからカヌーに乗っているというマット・ガトペルさん。カヌーを体の一部のように自在に扱う達人です。

まずは地上で簡単な説明を受けます。カヌーへの乗り降りは、パドルでバランスをとって低姿勢で乗り込み、カヌー上では絶対立たない、といったこと、そしてカヌーの特徴であるシングルブレードのパドル(ちなみにカヤックは両端にパドルがついたダブルブレードを使います)の持ち方など、一からのレッスンです。漕ぎ方は、実際に水上で体験しながら覚えるのが一般的なようですが、ちょっと心配なのでこちらも地面の上でじっくり教えてもらうことに。
前に進むための「パワーストローク」、舵をとりながら漕ぐ「Jストローク」、回転するための「ドロウ」や「プライ」、「スィープ」など、さまざまな漕ぎ方があることにビックリ。地上で見せてもらうと、パドルの向きがよくわかり、とりあえず理屈だけは理解できます。とはいえ、いつまでも陸地にいてもうまくはなりません。さあ、水の上に出て「Let’s paddle!」

静かな湖にカヌーを浮かべ、スイスイ…

アルゴンキン州立公園の中には、数えきれないほどの湖がありますが、この日練習場となったのは、キャッシュ・レイクという複雑な形をした湖。湖面が大変穏やかなので、初心者にはぴったり。さっそくカヌーを浮かべ、2人乗りで漕ぎ出します。前に座る人はエンジン係で、ひたすらパワーストロークを担当。後ろに乗る人は舵取り役。水の中でパドルの向きを調節しながらカヌーの方向を定めます。私も果敢に後ろの舵取りを担当。まっすぐ進めようと思うのですが、ちょっとパドルの向きを変えるだけでも舳は大きく動き、なかなかうまくいきません。振り返ると、湖面には大きく蛇行した私たちのカヌーの航路がくっきり。まさに迷走状態ですが、とにかく前には進んでいます。これ、面白い!

ジタバタ漕いでいると、インストラクターのマットが自分のカヌーを横付けして、いろいろ指導してくれます。彼のカヌーは縦横無尽。向きを変えないまま真横に移動することだってできてしまいます。これはパドルを8の字に回転させる「フィギュアエイト」というワザだそうですが、私がトライしてもバチャバチャ水をかき回すばかりで何も動きません。さすがに一朝一夕というわけにはいきませんね。
湖の上で2時間ほど楽しみながらパドリング・レッスン。ハスの花が咲いた湖面を渡ったり、ビーバーロッジに近づいたり。何ともエキサイティングで気持ちのいいひと時でした。

広大なアルゴンキンの奥へ、アドベンチャーツアー

翌日は、本格的パドリングツアーに挑戦。アルゴンキンの奥地まで、カヌーで入っていく予定です。昨日に引き続き、今日のガイドもマット。「さあ、楽しもうぜ」とノリノリ。自然の中にいるのが大好きなのでしょう。
公園東部にあるオピオンゴ・レイクから、カヌーをモーターボートに乗せ、まずは湖の奥にあるヘイルストーム・クリークという湿地帯を目指します。道路などはなく、水路でしか行くことができない秘境。ビーバーをはじめムースなどの生息数も多く、動物ウォッチングも同時に楽しめるワイルドゾーンです。
クリークの入り口でモーターボートからカヌーに乗りかえ、いよいよパドリング開始。広大な湿地帯に巡る水路は、流れもほとんど感じられないほどに穏やか。ところどころに水草の島ができ、それらを迂回しながらゆったりと蛇行していきます。

5時間程度のツアーで、実際にカヌーを漕いでいるのは往復3時間ほど。大自然の中、なんだかパドルさばきにも慣れてきて、ちょっとした探検家気分に。聞こえるのは水を漕ぐパドルの音、そして小鳥のさえずりばかり。広大な風景の中に溶け込んでいくような快感。これぞアルゴンキンの醍醐味です!
お昼は、水路の先にある何もない小島に上陸し、ピクニックランチ。これ以上ないというほど、贅沢なシチュエーションを満喫しました。

湖畔のロッジに泊まり、朝もやの中でカヌー

すっかりカヌーにも慣れてきた私たち、滞在先のロッジでも、パドリングを楽しみました。アルゴンキン州立公園内には、古くから残る3軒のロッジがあり、そのいずれもが湖畔の宿。各部屋の前にカヌードックがあり、いつでも無料で自由に楽しむことができるのです。
私たちが滞在したアロウホン・パインズも、カヌーを楽しむには最適な宿です。メインの道路からかなり北に入った、リトル・ジョー・レイクという湖の畔にあり、湖はほかの湖にもつながっているため、その気になればかなりのカヌートリップができてしまいます。もちろんガイドはつかないので、初心者の私はロッジが見える範囲で楽しみましたが、それだけでも満足度は200%。

とりわけ感動したのは、早朝の霧の中のカヌーです。朝靄に包まれた乳白色の湖面に太陽が差すと、あたりがオレンジ色に輝きはじめます。その幻想的な美しさといったら! 他ではなかなかできない体験。このひと時のパドリングのためだけに、アルゴンキンを訪れるのであっても、その価値は十分にあるのではないでしょうか。
初心者でもこれほどまでに堪能できる、カヌー inアルゴンキン。皆さんも、この特別な自然体験を楽しんでみませんか。

手作りカヌーのアーティストを発見!

現在使われているカヌーはほとんどがグラスファイバー製など、最新素材を利用していますが、もともとは先住民が木とシラカバの樹皮などを使って作ったもの。
アルゴンキン州立公園近くに工房をもつリック・ナッシュさんは、この伝統的なカヌー作りを続けているカヌービルダーです。若いころニューヨークでカメラマンとして活躍していたリックさんは、40年ほど前、北オンタリオに先住民のカヌービルダーを撮影にしに来て、その乗り物の魅力にすっかりはまってしまったといいます。以来、ここに住み、杉の木を切って曲げ、シラカバの皮をはぎ合わせ、すべて手作りの昔ながらの方法でカヌーを作り続けてきました。工房は非公開ですが、その制作工程や作品はウェブサイトでも見ることができます。もちろん興味のある方はオーダーもできます!