Ontario Style Special Contents Vol.58 川ア宗則選手インタビュー トロントはすごくいいところ。福岡みたいな温かさを感じました

2013年、トロント・ブルージェイズで大活躍した川ア宗則選手。天性の明るさとポジティブなキャラクターで、破天荒なムードメーカーとなり、チームメートはもちろん、現地のファンやメディアの間でも大人気となりました。
そんな川ア選手に、トロントでの野球、生活、そしてファンとのふれあいなど、シーズン中の思い出をお話しいただきました。

川ア宗則
かわさきむねのり
1981年6月3日生まれ、鹿児島県出身。内野手。
2000年から2011年まで、福岡ソフトバンクホークスにて活躍。2006年、WBC日本代表メンバーに初選出、2008年、北京五輪の日本代表に。
2012年にシアトル・マリナーズとのマイナー契約からメジャーへ昇格。2013年3月、トロント・ブルージェイズとマイナー契約。4月にメジャー昇格後、2度の降格を経験しつつも、独持の存在感で健闘。最終成績は打率.229、1本塁打。 2013年11月現在、フリーエージェントを公示。
←写真は「どうだ、今のプレー見た?」という意味のハンドサイン。指はチーム中心のホセ・レイエス選手の背番号7を表しています。ガッツポーツは相手チームに対して失礼という配慮から、チームメート同士でこうしたサインが交わされているそうです。

ロジャース・センターでは
お客さんからものすごくパワーをもらいました

―― 昨年活躍されたシアトルから、今年の春トロントに移られたわけですが、トロントでプレーをされた印象はいかがでしたか。

川ア  試合のことを言うなら、全試合が印象に残っています。トロントは、すごくいいところでした。

―― 大変な人気でしたね。

川ア  人気とかよりも、チームの戦力もあるので一概には言えないけど、お客さんの雰囲気はすごくよかった。ホームのロジャース・センターでは、守っていても逆にみんなが守ってくれているなと。トロントの人からパワーをもらう感じでした。

―― テレビ中継など、英語でインタビューをうけても、通訳を通さず英語で返答されていた。これがまた大人気で。

川ア  It’s all about soul.(気持ちの問題)。チームメートにも「日本人はみんな通訳つけるだろ、大丈夫か」って心配されたけど、ドミニカとかベネズエラの選手とかは通訳がいないわけですよ。僕だって一緒じゃないかと。だからチームメートには「I have you」、通訳いないけど、お前らがいるからって答える。この一言は、結構みんな好きな感じだったですね。僕が何とかしなきゃって助けてくれるんです。しかもでっかい声で言うと面白い。日本人って声が小さいイメージがあるらしいけど、僕はちょっと南米・・・っていうか鹿児島入っているんで。薩摩の血がそうさせるんですね。

ブルージェイズのファンで埋め尽くされるロジャース・センター

―― おなじみの「チェスト!」とかも教えちゃったんですか。

川ア  教えたんですけど、「なにそれ、胸?」と、混乱するだけで。英語で言ってもわからないから、「それは鹿児島の、薩摩示現流のかけ声なんだよ」って日本語で説明する。そうするとみんな喜ぶんです。

―― 喜ぶんですか?

川ア  日本語、珍しいから。ちょっと怒った時とか、褒める時とか、特に日本語で言います。「お前たち、もう少し真面目にやれ」とか「今のすごいよ。いいプレーだったよ。これ次の回に絶対つながるから」とか。特に若い子たちとかにね。そうすると、なぜか喜ぶ。怒ってるとか褒めてるとか、なんとなく伝わる。そう思っているのは、実は僕だけかもしれないけど。

開閉式ドームのロジャース・センター。CNタワーのすぐ脇にあります

―― 案外、理解しているかも。

川ア  「問題ない」「頑張って」「先手必勝」とか、「さあ行こう」とかは、もうわかってる。これ以上言えないけど、悪い言葉もたいがい、みんな知っています。

―― プレーそのものはどうですか。日本とは違う?

川ア  やっぱりパワーもスピードもあるし、日本の野球とは違うところは多いです。日本は監督がしっかりと教育する、というかいろいろ厳しい。ひげをそれ、ユニフォームはこうしろ、とか規則も多い。で、それが落ち着いたりするんです、日本人は。でも、メジャーリーグは、自分でルールを作って自分のやりたいことをグラウンドで出す。チームのルールも監督のルールもあるけど、まずチーム25人それぞれのルールがある。

―― じゃあ、大変でしたか。

川ア  来たばかりの頃は大変でしたが、僕、結構そういうの好きなんですよ。小さいころから自分で何かするのが好きで。自分で決めて自己管理する。責任は自分でとるしかないから。それがプロだと思うし。メジャーリーグでは特にそういうことを感じました。

街を楽しむ時間はあまりなかった
でも、トロントでの経験は僕の宝物です

―― トロントの街の印象はいかがでしたか。

川ア  街並みがきれいで、住みやすかったです。天気も良くて気持ちよかった。シアトルも、ものすごくいいところで好きだったんですけど、トロントにはいろいろな国の人がいて、日本人もいて、国籍とかに関係なくみんなやさしい。僕は、前は九州の福岡でずっとプレーしてたんですけど、福岡の人の温かさ――例えばタクシーに乗ったらすぐ「頑張ってね」とか、運ちゃんが声かけてくれたりする――みたいなところがあって、もちろんこっちのほうが都会なんですけど、そういうところがなんとなく福岡っぽいなと。

―― お住まいは球場の近くだったんですか。

川ア  ホーム球場のロジャース・センターから、歩いて10分くらいのアパートに。たいてい歩いて球場に行っていました。

―― 休日はどんなふうに過ごされていたんですか。

川ア  なかなか休みはなかったですね。メジャーリーグは1シーズンに162試合戦うわけで、ほとんど毎日試合。移動ばかりで、いつも飛行機に乗っていたという感じ。試合が終わったら、その日のうちに専用のジェット機に乗って移動して、ホテルで寝て、そしてまた試合。そんなかんじ。だからトロントを楽しむ時間はあまりなかったです。10月14日にシーズンが終わって、そこから2週間ほどトロントにいたので、ようやくその時、満喫しました。と言っても近所の公園でトレーニングしたり、ごはん食べに出かけたり、といった程度ですが。

ダウンタウンにあるショッピングモール「イートン・センター」

―― どんな店に行かれたんですか。

川ア  トロントはいろいろな国の人がいる分、いろいろな国の料理があるんですが、よく行ったのは「ヒロスシ」というお寿司屋さん。これがかなりおいしくて、魚もすごく新鮮で、日本で食べるよりおいしいかも、というくらい。他にも和食店はかなり多いし、その意味でもトロントは住みやすい街ですね。あとはイタリアンの店や韓国料理の店にも、奥さんとよく行っていました。

―― CNタワーとかは、登られました?

川ア  いや、実は登っていないんです。うちの親が来た時、奥さんが連れてったんだけど、僕は試合があるし、実際それどころじゃなく…。両親はほかにも、ナイアガラの滝にも行きましたね。

―― ダウンタウンは結構歩きましたか?

川ア  奥さんと子供と、ショッピングモールに行きました。子供はまだ2ヶ月くらいだったから、こうして僕が抱っこヒモして。結構腰にきて、良いトレーニングになるかなと。

―― お子さん、かわいいでしょうね。

川ア  そうですね。僕はあまり子供には興味なかったんですよ。昔から自分が一番好きだったんですけどね。今は子供に会いたいなとか、変な感情が芽生えてきて、何だこの気持ちは、と。一番好きな人間がちょっとずつ変わって、今は2.5ゲーム差ぐらいで追われている側みたいな。すぐ追い越されるのかな。嫁さんはもう全然、子供のほうがかわいいと言う。僕なんかだいぶ順位が下がったよね、嫁さんからしたら。

街を一望できるCNタワーはトロントのトップ観光スポット

―― スポーツ観戦などは? トロントは野球以外にもプロスポーツが盛んですし。

川ア  この前、NBAの試合を見に行きましたよ。トロント・ラプターズとニューヨーク・ニックスのゲーム。迫力があって面白かった。あと、アイスホッケーも盛んですよね。トロントではまだ観戦できていませんが。

―― 選手として滞在すると、なかなか街を楽しむ時間はないんですね。どこにいようと関係なく、まず試合、野球というかんじですね。

川ア  さっきも言ったとおり、飛行機に乗って、降りてバスに乗ってホテル。その繰り返し。なので、こういうインタビューを受けても、トロントのことをお話できることがなかなかなくて、申し訳ない。でも、この街とは1シーズン縁があって、それは僕の宝物ですよ。

―― 大変でしょうが、また来年もさらに活躍されるのを日本のファンは期待しています。

川ア  今年学んだことをオフシーズンでのトレーニングに活かしていきたいです。来年はどこでやるかわからない。でもどこであれ、どこかで野球をしたいと思っています。もしかしたら川ア電気のユニフォームを着ているかもしれないし(笑)。いつもそういうつもりでやっているんです。毎日、とにかく毎日目一杯やっているんです。

―― 来季も、体にお気をつけになって頑張ってください。

川ア  はい、ありがとうございます!