Ontario Style Special Contents Vol.63 落語家 桂三輝さんインタビュー。 いろいろな国の文化がそのままあるのが、トロントの面白さ

テレビなどでもおなじみの落語家桂三輝さんは、生まれも育ちもカナダのトロント。日本に来てすでに15年となり、普段から和服を着こなすなど日本人以上に日本的な感覚を身に着けた三輝さんですが、今回はトロントっ子に戻り、故郷の魅力をたっぷり語っていただきました。

桂三輝
かつら さんしゃいん
カナダ、トロント出身。落語家、劇作家、作曲家。
トロント大学を卒業後、劇作家として活躍。その後来日し、2008年、6代目桂文枝(当時桂三枝)に弟子入り。寄席「伊勢河崎輝輝亭」をオープンし、活動を行うほか、各地で落語会、バイリンガル落語会を開催。2013年の北米英語落語ツアー(20都市・30公演)に続き、2014年にもテキサス・ケンタッキー英語落語ツアーを行い話題に。テレビ、ラジオのレギュラー出演番組も多数。2009年には大阪芸術大学大学院舞台芸術研究科修士課程の卒業も果たす。

料理もライフスタイルも、みんな違うのが魅力

―― 今日は、生まれも育ちもトロントいう三輝さんに、この街のいいところをいろいろお話していただこうと思います。まず、トロントの魅力を一言で教えてください。

三輝  そうですね、私が好きなのは、移民が多いところです。カナダ自体、移民の国ですが、トロントは特にいろいろな文化の人が多い。実際、うちの両親はスロベニアからの移民だし、友達もイタリア、中国、日本、アフリカのいろいろな国の人がいっぱいいます。私も日本にきてもう15年になるから、たまにトロントに戻ると、いろんな人がいて「わー、外人がいっぱい!」なんてテンションあがりますよ(笑)。

―― いろいろな国の文化も体験できる?

三輝  そう。市内には、たとえばグリークタウンリトル・イタリー中華街など、たくさんの民族街があります。中華街なんて5つくらいありますよ。で、たとえばグリークタウンに行ってレストランに入ったら、ギリシャのままの料理が出てくる。そしてそれが本当においしいんです。

―― 日本だと、多少日本人向けにアレンジしますが、そういうことはしないんですね。

三輝  だって本国から移民している人を相手にしているから、アレンジする必要がないんです。カナダ風とか、トロント風というものはなく、それぞれの国の文化がスタンダードになっているわけです。料理だけでなく、ライフスタイルもそう。そうした感覚すべてが面白いと思います。

グリークタウンのレストラン

―― お気に入りのレストランなどありますか?

三輝  やはりグリークタウンのレストランはよく行きます。日本人の方にもおすすめですよ。あと、夏はオープンテラスの店。たとえばリトル・イタリーのテラスなんか本当に好きです。昼間からワインとかビールとか飲んで、ちょっとパスタを食べて。外だから知り合いに出会ったりして、いつの間にか一緒に飲んでいたりして。知らない人が話しかけてきたりすることも多いし、いろんな出会いがあって面白いんです。

―― 自由ですね。

三輝  そう。あとトロントにはいっぱいあるんだけど、ブリティッシュ・パブやアイリッシュ・パブも最高ですよ。古い建物を使っているところも多く、中にはいろんな部屋があってテラスも表と裏にあるような店も多いんです。夏の夜は人でごった返していてとにかく賑やか。席に座らずウロウロしていてもOKだし、偶然隣にいた人と話はじめるとか、よくあります。「I came from Japan!」とか言ったら絶対盛り上がるでしょうね。行けば必ず出会いがあって、とっても楽しい。ハンバーガーとかナチョスとかのパブ料理もおいしいし、ビールも、ものすごく種類が多い。トロントに帰ったら絶対行きたい場所のひとつですね。

リトル・イタリーのパティオ

カジュアルなアイリッシュ・パブ

デートスポットもたくさんあります!

エドワーズ・ガーデンズ

―― では、のんびりするのにおすすめの場所はありますか?

三輝  ダウンタウンの北にあるエドワーズ・ガーデンズというところはいいですね。植物園もあって花がものすごくいろいろ咲いていてきれいですよ。東京でいったら、新宿御苑みたいな感じですね。サイズはもっと大きいですが。

トロント・アイランド

―― デートで行ったりしたんですか?

三輝  ふふ。デートは、ここで話せないことがいっぱいで…。なんてね、上品にいきましょう。エドワーズ・ガーデンズは行きましたね。あとトロント・アイランドも、いい。セントラル・アイランドというところに小っちゃい遊園地があって、ときどきコンサートとかもやっていて、デートスポットとしてかなりいい場所。そうだ、ハイパークに行くことも多かったですね。近くに住んでいたので。ここもまた大きな公園で、森に入っていくような感覚なんです。公園内には屋外シアターもあって、夏には必ずシェイクスピアをやるんです。「真夏の夜の夢」とか、風景が関わってくる演劇をやるので、これがすごく良かったですね。

市内にはシアターが充実

―― そういえば、三輝さんも、もともと演劇の世界にいらしたんですよね?

三輝  そうです。最初はギリシャ古典の喜劇に興味があって、若いころはミュージカルを作っていました。

―― 劇作家でもあり、作曲家でもあって?

三輝  はい。トロントはブロードウェイ・ノースといわれるくらいショウビジネスが盛んで、劇場もすごくたくさんあるので。そういったところで、いろいろやらせていただきました。

―― ロングラン記録もお持ちとか。

三輝  25歳の時に作った「クラウズ」、“雲”という作品です。ギリシャの古典から翻訳をしてミュージカルにして。小さな劇場だったんですが、15か月のロングランになりまして、カナダ人が作ったミュージカルとしては、今のところ最長だそうです。

―― 演劇の世界から落語家へ、それにしても、大きな方向転換をされましたね。

三輝  当時、実は劇作家としてニューヨークを目指していたんですが、その前にちょっと日本に行ってみようと思ったんです。ある学者さんが、ギリシャ古典と日本の能や歌舞伎は似ているといったようなことを書いたのを見て、ちょっと観てみたくなって。で、実際に来たら、日本にはまってしもうた。

一年中、スポーツ観戦の楽しみも

エア・カナダ・センターで行われるメープルリーフスの試合

―― 話をトロントに戻しましょう。トロントにいらっしゃるときは、カナダ人らしくアイスホッケーとかやってらしたんですか?

三輝  私は、同世代のカナダ人男性で、アイスホッケーをやらなかった唯一の人かも。役に立たんカナダ人です。両親がスケート好きだったので、子供のころからフィギュアスケートを勧められて、ハーバーフロントとか、市庁舎前のパブリックリンクで滑っていました。アイスホッケーをやりたいといったんですけど、「あれは危ないから」みたいな感じで許してもらえなかったんです。夏も両親の影響でテニス。アルバイトでテニスの先生もやったんですよ。

ブルージェイズのゲームはロジャース・センターで

―― アイスホッケーの観戦は?

三輝  これはもう、典型的カナダ人。大ファンです。今、メープルリーフスはちょっと情けない感じですけど。それからバスケットのトロントラプターズも好きだし、夏はMLBのトロント・ブルージェイズ、川ア選手もいますしね。彼は「ブルージェイズの心」と呼ばれるくらい、こちらで人気があるんですよ。去年彼が初ホームランを決めたとき、ファンのみんなが立ちあがって「カーワーサーキー!」って大合唱になったって、新聞で読みました。こんな風に観客全員が誰かの名前を叫ぶなんて、何年ぶりかですよ。スゴイですね。

オンタリオに来たら帰りたくなくなるかも

ナイアガラ・オン・ザ・レイクの街並み

―― トロントをベースに小旅行するとしたら、どこがおすすめですか。

三輝  そうですね。スロベニアから親戚が来ると必ず連れて行くのは、やっぱりナイアガラ。滝を見るだけじゃなく、その近くにあるナイアガラ・オン・ザ・レイクという街にも寄ります。ここはすごくきれいなところで、「赤毛のアン」の世界みたいな雰囲気のいいホテルもあるし、周りにはワイナリーもいっぱいあるんです。滝を見て、ワイナリーめぐりをして、いい感じのホテルに泊まって…というのがすごくおすすめです。

―― 女性にものすごく受けそうですね。

三輝  年齢を問わず楽しめると思います。あとアウトドアが好きな人だったら、アルゴンキン州立公園ですね。ここは東京都の3倍くらいの広さがあって、めちゃくちゃ大きい。昔、ここで友達と一緒にカヌーで旅をしました。水路の地図を見ながらどこまでも行けるんです。途中、湖とか島とかあるんですけど、何時間漕いでいても、誰にも会わないようなこともありました。大きなムース(ヘラジカ)とか、ルーン(アビ)とか野生動物も見たし、それから夜の静けさもすごい。本当に自然の自然の自然!

―― 大都会の近くにそんなところがあるなんて、やっぱりカナダですね。では最後に、トロント旅行、オンタリオ旅行を計画している人に、ぜひメッセージを。自慢でもOKですよ。

三輝  Come to Ontario. You don’t want to leave.
オンタリオに来たら、帰りたくなくなると思うよ!