Ontario Style Special Contents Vol.73 ナチュラリスト 佐久間克宏の冬の使者シロフクロウ 探鳥ツアー

カナダの大自然をご紹介するネイチャーガイドの佐久間です。タイムリーな事に、この記事を書き始めた11月1日、「シロフクロウが隣町に飛来」という嬉しいニュースが入りました。毎年、僕の住むオンタリオ湖畔ポートホープからさらに東のキングストンまで、シロフクロウ達が越冬の為に北極圏から飛来し、バードウォッチャーに限らず多くの人々を魅了しています。真っ白な体の為、「Snowy Owlスノーウィアウル」と英語で呼ばれ、ハリーポッターのペット「ヘドウィグ」としても有名です。今回は、僕が毎年1〜2月に行っているシロフクロウのウォッチングツアーを、彼らの驚くべき生態も交えながらご紹介します。

佐久間克宏(サクマカツヒロ)

98年秋家族と共にオンタリオ州へ移住し、アルゴンキン州立公園でカヌーやハイキングのガイドを始める。2007年よりアルゴンキン州立公園パークナチュラリストとなり、ビジターセンターで公園の自然史をビジターに解説している。幼少から日本で培った知識と経験を基にした、分かり易い自然解説には定評がある。オンタリオ州の他、BC州やユーコン準州でも自然をテーマにしたネイチャーツアーのガイドとしても活躍し、カナダの自然を日本に紹介している。

オンタリオ湖畔へシロフクロウが飛来する理由

この地に飛来するシロフクロウ達は、オンタリオやケベック州の北極圏に広がるツンドラ地帯が繁殖地です。狩猟の上手な成鳥は、餌となるレミングというネズミなどが棲息していれば、冬でも北極圏に留まります。ところが、狩の未熟な若鳥は厳しい冬の北極圏では成鳥との競争となり、餌の確保が難しくなるので、より餌の多いカナダ南部へ渡って来るのです。オンタリオ州南東部に広がる、平坦な牧草地帯や穀物畑などの休耕地が、ツンドラ地帯に似ている事、餌となる多くのハタネズミがこうした休耕地に生息している事がこの地に越冬に来る大きな理由です。

大人のオスは体全体がほぼ真っ白ですが、メスと若いオスには頭や体に黒い縞模様があります。体長50-70cm、体重1.8kgと北米19種のフクロウの中でも最大級です。オンタリオ州に渡ってくるのは、縞模様の入った若鳥が多くを占めています

Day 1 ビクトリアンスタイルのB&Bに宿泊し、カナダの歴史も体感

ツアーの初日。トロント国際空港から車で東に約1時間半で、ポートホープの街に到着です。米国独立後、英国に忠誠を誓う「ロイヤリスト(王統派)」と呼ばれる人々が難民となり、1793年にオンタリオ湖を渡りこの地に集落を作ったのが街の始まりです。林業と穀物で大きく発展した1800年代初頭には、トロントとキングストン間では一番大きな街だったそうです。シロフクロウツアーでは、ここポートホープに1857年建造されたビクトリア調B&Bに3泊と、かつてアッパーカナダの首都だったキングストンに1泊します。カナダの歴史に触れる事が出来るのもこのツアーの魅力です。

1851年建造のポートホープ市庁舎。 ビクトリア王朝初期の建造物で街のアイコン的存在です

3泊するCarlyle Inn。1857年アッパーカナダ銀行として建造された建物です

Day 2 砕氷船の様なフェリーで渡る、フクロウの島アマースト島

2日目は、キングストン近郊オンタリオ湖に浮かぶアマースト島を訪れます。この島は東西20キロ、幅7キロの細長い小島で、平坦で放牧地が多く、ハタネズミも多く生息する事から毎年5-10羽前後のシロフクロウが飛来する島として有名です。
面白いことに、最初のシロフクロウ観察ポイントは、この島に渡るフェリー航路上にあります。ツアーは1月〜2月の極寒時期におこなわれるので、フェリー航路は結氷している事も多く、狭い水路を砕氷船のごとく氷を割りながら進みます。この狭い水路には水鳥が集まり、それを狙ってシロフクロウもやって来ます。というわけで、フェリーに乗っている間、比較的近くでしかも狩りをするシーンに出会える確率が高いのです。
島内では、放牧地の杭や電柱、木の頂が観察のポイントです。東部にある「Owl Woods(フクロウの森)」と呼ばれる、フクロウの保護区も訪れます。

湖面が結氷し、砕氷船の様に氷を割りながら進むフェリー。狭い水路になった場所に集まる水鳥を追って、シロフクロウも飛来します

氷上で獲物をじっと待ち構えるシロフクロウ。鳴く事はほとんどありません

島内では、こうして電柱や柵の上でじっと獲物を待ち構えている姿を見かけます

「フクロウの森」には、写真のバードアウル(アメリカフクロウ)やショートイヤードアウル(コミミズク)など、通年多くのフクロウが棲息しています

Day 3 キングストンの歴史街とプレスキル州立公園

3日目は、キングストンをベースに行動。キングストンはカナダの前身である「アッパーカナダ」の首都として栄えた歴史的な町です。米国の侵攻を防ぐために作られた要塞「フォートヘンリー」や「リドー運河」を守る円筒要塞「マーテロタワー」などの要塞群が残り、世界遺産にも登録されています。滞在中は、多くの水鳥が集まるリドー運河の水門へも行く予定です。またオンタリオ湖畔に突き出た半島、プレスキル州立公園に立ち寄り、シロフクロウや、水鳥、その他の野鳥を観察して、ポートホープのB&Bへ戻ります。

1843年国会議事堂として建設された建物が市庁舎として現在も使用され、国定史跡にもなっています

プレスキル州立公園は、オンタリオ湖に突き出た半島と広大な湿原がある事から、春と秋には羽休めの場所として多くの野鳥が観察出来、探鳥場所として人気の高い公園です

Day 4 ポートホープ郊外で、地元のバーダーと交流

4日目は、B&Bで朝食後地元でも有名なバーダー(野鳥観察家)と一緒に、郊外にバードウォッチングに出かけます。ポートホープ近郊でも、シロフクロウをはじめ、日本ではあまり見ることの出来ないユキホオジロやベニヒワなどの冬鳥を観察することができます。午後は、地元のスーパーへ行きお土産などのショッピングや、ポートホープの街中を散策します。夜はB&Bのレストランで最後のディナーを楽しみ、翌朝空港へ戻りツアーが終わります。

エリザベスとロジャーと一緒にバードウォッチング。彼らはバンディング(野鳥に足環を付ける識別調査)もしている、ポートホープで有名な探鳥家です

ポートホープ郊外で観察できたスノーバンティング(ユキホオジロ)の群れ。毎年50〜60種の野鳥を観察する事が出来ます

知れば知るほど面白い!シロフクロウのメカニズム

270度首を動かし視界を確保

シロフクロウの眼球は長く、双眼鏡の様な構造なので、遠くの物も良く見えるのです。また、暗闇でも僅かな光を多く捉える「桿状体」と呼ぶ網膜の光を感じる視神経をより多く持つため、暗闇でも優れた視力を持ちます。眼球は眼窩という窪みにきっちりと収まっている為、人間の様に眼球を動かして、視野を広げる事が出来ません。目を動かせない代わりに、首を左右により多く動かす事で、視野を広げているのです。頚骨の数は14本で、人間の倍。これが、270度首を回せる理由なのです。

暗闇でも音で獲物の位置をキャッチ

この頭蓋はソーウェットアウルと呼ばれる別種ですが、右の耳穴は上に開口部が向き(写真左)、左の耳穴は下に開口部が向いています(写真右)。この形状により、左右の耳に到達する獲物の音に時差が生じ、この時差を頭脳が三角測量の要領で即座に解析し、暗闇や雪の下に隠れる獲物の位置を正確に割り出せるのです。

静音飛行を可能にする驚異の羽

優れた狩猟能力は鋭い視力と聴力の他、羽の構造にも大きな秘密が隠されています。まず、羽の上面が柔らかく、羽ばたく際に羽と羽がこすれて起こる摩擦音が少ない事。次に、飛行の際、最も前になる羽(第10初列風切)の端が、ギザギザで櫛の様な形状の為、細かな乱気流が発生し風切り音が出ない構造になっています。この二つの理由から、音を立てずに獲物に向かって滑空する、言わば「ステルス飛行」が出来るのです。

冬のオンタリオでシロフクロウウォッチングツアー!

2016年にも1月末〜2月末に、佐久間さんがガイドするシロフクロウツアーが予定されています。ご興味のある方はメールにてお問い合わせ下さい。
kcjsakuma@sympatico.ca